
リチウムイオン電池火災の原因と対策|小樽の事例・北海道産廃現場【2026年】

2026年5月、小樽市のごみ処理施設で破砕作業中に火災が発生しました。リチウムイオン電池が原因だと思われがちですが、実は市の発表では「直接の原因は不明」とされています。なぜこの違いが大切なのでしょうか。原因が確定していない段階で一つの要因に決めつけると、本来必要な安全対策を見落としかねないからです。産業廃棄物の経営者にとっても、選別工程だけでなく、排出元から受入れまでの管理を見直すきっかけになる事故だと思います。
1.小樽の火災――何が起き、どこまで分かったのか
2026年5月4日、北しりべし広域クリーンセンターで、燃やさないごみの破砕処理中に火災が発生しました。消防立会いのもと調査が行われ、焼けたごみからリチウムイオン電池、ガスボンベ、スプレー缶が見つかっています。人的被害はなく、施設の一部に焦げる損傷がありました。ここまでは小樽市が公表した確認事実です。
では、電池が出火原因だったのでしょうか。小樽市は「直接の原因は不明」と説明しています。電池やガスボンベ等が破砕時に発火し、周囲のプラスチック類へ燃え広がった可能性を推測していますが、どの品目が最初に発火したかは断定していません。「電池が見つかった」と「電池が原因と確定した」は別の話です。
市の2025年度集計では、不適正に混入した電池使用製品等を手作業で4,926個取り除き、それでも発火・発煙トラブルが28件ありました。これは小樽市の一般廃棄物処理の集計であり、北海道の産廃処理施設の火災件数ではありません。
2.事故は海外でも――原因の表現に注意する
英国ロンドン消防局は2025年3月のBrentford、同年12月のBeckton、2026年1月のCrayfordのリサイクル施設等での火災を公表しています。これらについて、電池の故障や不適切な廃棄が「最も可能性の高い原因」と評価された例があります。ただし、これも原因が確定したという意味ではありません。
米国のMoss Landingでは、2026年9月に残存する電池モジュールから火災が発生しました。米環境保護庁は正確な発火原因が不明としています。大型の蓄電設備と混合廃棄物の破砕施設では条件が違います。共通する危険性は参考にしても、そのまま同じ事故だとは扱えません。
3.全国の数字はどのように読むべきか
環境省が2026年9月29日に公表した2025年度の全国市町村調査では、リチウムイオン電池等に起因すると疑われる発煙・発火を含む火災事故等が39,282件、うち職員や消防隊が消火対応を行ったものが9,456件でした。数字には「疑い」の事例が含まれ、すべてが原因確定の火災ではありません。民間の産廃処理施設だけの件数でもありません。
だからこそ、「全国でこれだけ産廃施設が燃えた」と読み替えるのではなく、回収・選別工程に相当数の発煙・発火リスクがあることを示す材料として受け止める必要があります。
4.法律は難しく考えず、まず「誰が何をするか」
事業所から出た廃棄物について、まず大切なのは「捨てる会社にも責任が残る」ということです。廃棄物処理法第12条は、事業者が産業廃棄物を適正に処理し、外部に任せる場合にも適切な委託をするという基本ルールを定めています。許可を持つ業者に渡せば、排出した会社は何もしなくてよい、という制度ではありません。
たとえば電動工具や充電式機器を廃棄するなら、電池の有無を確認し、混合廃棄物と分け、取り扱える事業者へ渡すことが出発点です。北海道も、事業場・工場から出る場合には、分別して処理可能な産業廃棄物処理業者に委託する方法などを案内しています。
また、産業廃棄物を外部へ委託する際には、契約書や必要な情報の伝達、マニフェスト(処理の流れを確認する管理票)が重要です。電池が入っていることを知りながら黙って渡せばよい、というわけではありません。ただし、電池混入のすべてが直ちに同一の法律違反になるわけではなく、廃棄物の種類、委託内容、処理の実態などで判断が変わります。
なお、小樽の施設は一般廃棄物処理施設です。そこで発生した火災を根拠に、特定の産廃業者の違反が認定されたわけではありません。また、市町村向けの国の対策資料を、そのまま全産廃事業者に課された新しい義務として説明することも避けるべきです。
5.排出・運搬・処分の現場で、何を変えるか
第一に、排出事業者は「電池そのもの」だけでなく、スマートフォン、電動工具、掃除機、電子機器など電池内蔵製品を見落とさない仕組みを作ります。簡単に取り外せない電池を無理に取り出すことは避け、受入先と処理方法を相談することが必要です。
第二に、収集運搬事業者は、受入前に内容物を確認し、破損・膨張品を通常の混合廃棄物と同じように積み込まないようにします。端子の絶縁、衝撃や圧迫を避ける荷姿など、電池の状態に応じた取り扱いを決めておくべきでしょう。
第三に、中間処理事業者は、破砕前の選別を強化することです。小樽でも手作業による選別が行われていましたが、それだけですべてを取り除くことは困難でした。検知・停止・警報・散水などの設備と、作業員が発煙物へ無理に近づかない避難・通報手順を組み合わせることが重要です。具体的な消火・保管方法は施設構造と電池の状態によって異なるため、消防機関や設備専門家と事前に確認します。
6.安全設備を買えば問題は解決するのか
X線・AIによる選別装置、熱検知、自動停止装置などの導入は有力な選択肢です。環境省は2026年に関連設備の補助事業を公募しましたが、確認した一次公募は同年6月30日に終了しています。現在もその募集に応募できるかのような説明はできません。
設備投資で考えたいのは購入価格だけではありません。選別精度、誤検知、設備の保守、ラインを止めたときの損失、火災発生時の復旧費用まで評価する必要があります。さらに、破砕機等の入替えや施設変更を伴う場合は、産廃処分業・施設設置に関する許可や届出、建築・消防関係の確認が必要になることがあります。機械を発注する前に行政への確認を進める方が安全です。
7.まとめ・筆者の考察
小樽の事故が示すのは、原因を一つに決めつける危うさと、手作業だけの選別に頼る難しさです。電池の混入を防ぐには、排出する側と処理する側が情報を共有する必要があります。
北海道では処理施設と排出現場が遠く離れているケースもあります。収集後に「電池が混じっていた」と分かっても、簡単に返送できないことがあるでしょう。事故防止と安定操業の両方の観点から、荷受けの条件、追加選別の費用、異常時の対応を取引開始時に決めておくことが重要だと考えます。
8.行政書士に相談するメリット
電池を分別するだけなら、必ずしも行政書士に相談する必要はありません。一方、受入品目を変更する、選別設備を導入する、破砕施設を更新するといった場面では、既存の許可内容と実際の処理方法の整合が問題になります。行政書士は許可・届出の要否整理や行政との事前協議、必要な申請書類の作成で支援できます。設備の技術設計や消防安全については専門家と連携して確認することが必要です。
9.出典元・参考資料
・小樽市「ごみ処理施設で発生した火災について」2026年5月18日公開、7月2日更新 https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2026050700033/
・小樽市「リチウムイオン電池使用製品等の捨て方について」2025年4月14日公開、2026年5月20日更新 https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2025040800067/
・小樽市「FMおたる『明日へ向かってスクラムトライ!』令和8年6月1日放送分」 https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2026060100021/
・北海道「使用済みリチウムイオン電池の適正な廃棄について」 https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/jss/richiumuhaiki.html
・環境省「2025年度リチウムイオン電池等に起因する火災事故等の調査結果」2026年9月29日公表 https://www.env.go.jp/press/press_05588.html
・総務省消防庁「リチウムイオン電池総合対策ポータル:火災事故について」 https://www.fdma.go.jp/relocation/lithium-ion/accident/
・ロンドン消防局「Fire at waste recycling site – Brentford」2025年3月 https://www.london-fire.gov.uk/incidents/2025/march/fire-at-waste-recycling-site-brentford/
・ロンドン消防局「Fire at recycling yard – Beckton」2025年12月 https://www.london-fire.gov.uk/incidents/2025/december/fire-at-recycling-yard-beckton/
・ロンドン消防局「Fire at recycling centre – Crayford」2026年1月 https://www.london-fire.gov.uk/incidents/2026/january/fire-at-recycling-centre-crayford/
・米国EPA「September 2026 Fire」 https://www.epa.gov/ca/september-2026-fire
・環境省「リチウムイオン電池の選別・発火対策設備に関する公募」2026年3月30日 https://www.env.go.jp/press/111264_00006.html
・e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000137
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