
産廃旅行記 ~歴史の地、豊島へ~
環境コンサル行政書士法人の若月です。
去る2026年8月、香川県の豊島(てしま)に行ってきました。島の名前を聞いてピンとくる方もおられるかもしれません。ここは、日本国内最悪と言われた産業廃棄物の不法投棄事件が起きた現場です。

環境系行政書士の端くれとして、一度は見ておきたかった歴史の地。業界の先輩にお声掛けいただき、見学が実現しました。



いわゆる「豊島事件」は、事業者の横暴に行政が屈し、その判断の誤りを自ら正すことができないまま、収拾がつかないほど事態が肥大化してしまった事件です。事件の詳細は、当時島民を代表して行政と闘い、今回の旅をご案内くださった石井亨氏の著書に譲ります。
Amazon.co.jp: もう「ゴミの島」と言わせない 〔豊島産廃不法投棄、終わりなき闘い〕 : 石井 亨: 本
今回の旅を通じて、私が皆様と強く共有したいと感じたのは、「今日の廃棄物業界の常識は、こうした歴史の上に成り立っている」ということです。
「歴史は勝者が紡ぐもの」と言われますが、豊島事件における勝者は間違いなく島民の方々です。豊島の観光案内所にあるパンフレットや香川県のホームページにも、「事業者への指導を誤った」という明確な記載と謝罪が記されています。
石井氏の著書を読めば分かりますが、豊島の島民はこの謝罪の一言を獲得するために、膨大な時間、労力、そして資金という犠牲を払ってきました。一民人が行政、ひいては国家を相手に声を上げ、勝利を収めることがどれほど異例であり、筆舌に尽くしがたい苦難であったかは想像に難くありません。
不法投棄や野焼きを行っていた事業者の責任が重大であることは明白です。しかし、もしここで島民の方々が行政の圧力に屈していたら、廃棄物業界には癒着が横行していたでしょう。そうなれば、我が国のリサイクル情勢は30年は後退していたのではないかと、強く感じました。
行政書士である私の仕事の一つは、行政と事業者との間を取り持つことです。クライアントである事業者からかけ離れた見解を行政から提示され、時にはもどかしさを感じることもありました。しかし、彼らは「法の番人」です。事業者とのなれ合いが監督責任を崩壊させてしまうことを思えば、一見「お役所仕事」に見える対応の背景にも理解が深まり、自分自身の仕事の糧となりました。
約60万トンにも及んだ廃棄物の撤去は2017年に完了し、現在の豊島は「アートの島」として多くの人が美術館や作品を目当てに訪れる場所となっています。島を去る際、美しい朝焼けに染まる豊島の海を眺めながら、「この美しい島が戻ってきて本当に良かった」と胸が熱くなりました。

これからも「現場主義」をモットーに、廃棄物に関する知見をさらに深めてまいります。

