産業廃棄物|委託契約書の印紙税と基本ルール
委託契約違反について
廃棄物処理法では、委託基準に違反して、他人の産業廃棄物を処理することができない者に委託すること、また収集運搬の許可のみの者に処分を委託した場合等は、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金又はその併科となります。
また、委託基準または再委託基準に違反して、許可証の事業の範囲に含まれていない産業廃棄物を委託すること、書面による委託契約を結ばない場合、書面の添付及び必要記載事項の記載がない場合、法律どおりに再委託を行わなかった場合等は、3年以下の懲役もしくは300万円いかの罰金又はその併科となります。
さらに両罰規定としてこれらの者が所属する法人に対してはそれぞれ該当する罰則が科せられます。
なお、委託基準違反については、処理基準に違反した場合と異なり、行政命令を経ずに直接罰則が適用されることになっています。
個別契約書と基本契約書
委託契約書には、おおまかに分類すると個別契約書と基本契約書があります。
個別契約書とは個々の取引についてその都度で作成する契約書です。これに対し、基本契約書は契約当事者間において何回も同じような取引が反復継続する場合に、取引に共通して適用される基本的事項に関する取引条件をあらかじめ定めておき、個々の取引については個々の契約書内容を簡略化・省略化する趣旨で作成される契約書です。
委託契約書の記載事項に関しては、契約期間中に契約内容の変更又は訂正を行う場合、記載事項についても書面により変更又は訂正を行う必要があります。基本契約を作成した上で細目事項を別途定めることは問題ありません。
ただし、別途定める事項についても書面を作成する必要がありますので注意が必要です。
二者契約
排出事業者と収集運搬業者、排出事業者と処分業者のそれぞれに直接契約を締結する二者契約が原則となっています。「事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定めるものに、それぞれ委託しなければならない」(法第12条35項)と定められています。
印紙税について
廃棄物処理法には契約書の印紙について定めはありませんが、印紙税法で契約書や領収書に課税される税金(印紙税)について、印紙税を貼ることで納付することが定められています。
産業廃棄物処理委託契約書を作成する場合、原則として印紙税ほうに基づいて課税物件表(印紙税法別表第一)に定められた印紙税相当額の収入印紙を契約書に貼付し、消印することが必要となります。
産業廃棄物処理委託契約書は契約形態に応じて、契約金額(数量、単価、期間)が明記されている場合には、収集・運搬契約書は課税物件表の第1号の4文書、処分契約書は第2号文書に該当します。
また、収集・運搬及び処分契約書は契約金額が収集・運搬と処分で区分されていない場合には第1号の4文書に該当しますが、収集運搬と処分とで、契約金額が区分されている場合には、契約金額と比較し、高いほうになります。
なお、契約書に複数の廃棄物を記載する場合は「単価」×「数量」×「契約期間」を計算した数値が契約金額になります。
印紙税額一覧表(関連部分の抜粋)※平成28年4月時点
1号の4文書 運送に関する契約書
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
50万円以下 | 400円 |
100万円以下 | 1,000円 |
500万円以下 | 2,000円 |
1,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円以下 | 20,000円 |
1億円以下 | 60,000円 |
5億円以下 | 10,0000円 |
10億円以下 | 200,000円 |
50億円以下 | 400,000円 |
50億円を超えるもの | 600,000円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
解約の場合 | 不要 |
2号文書 請負に関する契約書
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
100万円以下 | 200円 |
200万円以下 | 400円 |
300万円以下 | 1,000円 |
500万円以下 | 2,000円 |
1,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円以下 | 20,000円 |
1億円以下 | 60,000円 |
5億円以下 | 10,0000円 |
10億円以下 | 200,000円 |
50億円以下 | 400,000円 |
50億円を超えるもの | 600,000円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
解約の場合 | 不要 |
電子契約書
委託契約書の電子化について
平成17年4月1日に「e-文書法」が施行されたことに伴い、「環境省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則」が制定されました。
これにより、廃棄物処理法による作成・保存等に代えて「電磁的保存・作成・交付」が可能となりました。
例えば、パソコンを使ってエクセルやワードで委託契約書を作成したり、従来の委託契約書をスキャンしてパソコンに保存したり、データを保存することが認められている。ということです。
廃棄物処理法では、電磁的に作成される委託契約書要件について、委託基準を遵守すること以外に特別の定めがなく、文書作成ソフトにより作成した書面等で問題ないと考えられています。また「電子署名及び認証業務に関する法律」による「電子署名」等は義務付けられておりません。
以下のものが可能となります。
- 帳簿の作成・保存
- 収集運搬車両等に備え付けなければならない書面(許可証等)の保存
- 産業廃棄物の委託契約書及び添付書類の作成・保存
- 産業廃棄物の再委託における書面による排出事業者の承諾書の保存、再委託者に引き渡す文書の交付
なお、電子取引を行った場合は、印紙税法の「文書」に該当しないため、不課税文書となります。