北海道の産廃現場で増えるリチウムイオン電池火災|原因と安全処理策

北海道でも増えるリチウムイオン電池混入火災。電池の成分・特徴・従来電池との性能差、使用製品と普及データ、国内の実際の大規模火災事例を最新数値で整理。産業廃棄物としての安全な分別・保管・運搬・中間処理の具体策と、他県との対策差を解説します。

北海道×リチウムイオン電池×産廃処理:いま何が起きているか

リチウムイオン電池(以下LIB)は便利さの裏で、「混入→破砕・圧縮→内部短絡→発煙・発火」という事故ルートを持ち、廃棄物処理施設・収集車の火災を押し上げています。消防庁の全国集計では、LIB等から出火した火災は2024年に982件(製品別ではモバイルバッテリーが多く、処理施設96件・収集車84件も報告)とされています。
北海道でも、中間処理(破砕等)で衝撃が加わると発火し火災事故等の原因になり得るとして、道が適正排出を注意喚起しています。

1) リチウムイオン電池の成分(なぜ危ないのか)

LIBは、ざっくり言うと「金属と可燃性溶媒を薄い膜で仕切って高密度に詰めた装置」です。

  • 正極(カソード):リチウムを含む金属酸化物(例:NMC、LFPなど)
  • 負極(アノード):主に黒鉛(グラファイト)+銅箔集電体
  • 電解液:有機溶媒+リチウム塩(例:LiPF6)
  • セパレーター:薄い多孔膜(破損すると内部短絡)
  • 外装:円筒/角型缶、ラミネートパウチなど

事故の実務上のポイントは、「端子が導通する」「セルが変形する」「外装が破れる」のどれかで、内部短絡や熱暴走のリスクが跳ね上がる点です。

2) リチウムイオン電池の特徴(普及した理由=廃棄が増える理由)

  • 高エネルギー密度(同じ重量で長時間使える)
  • 高出力(瞬間的に大きな電流=電動工具・車載に向く)
  • メモリー効果が小さい(運用がラク)
  • 繰り返し充電できる(サイクル寿命)

一方で廃棄・リサイクル段階では、「損傷したセルが混入しやすい」「残電量(SOC)が残ったまま出る」ことが火災の根っこになります。

3) リチウムイオン電池と従来の電池との性能比較

産廃の現場では「性能が高い=事故エネルギーも大きい」と考えると理解が早いです。

  • 鉛蓄電池:重い・低エネルギー密度/硫酸による腐食リスクはあるが、破砕・圧縮で即熱暴走しやすいタイプではない
  • ニッケル水素(NiMH):LIBよりエネルギー密度が低く、熱暴走リスクは相対的に小さめ
  • リチウムイオン電池(LIB):軽量高密度で、損傷・短絡時の発熱が急峻(「混ぜて砕く」工程と相性が悪い)

4) リチウムイオン電池を使用している製品

家庭系・事業系どちらにも広く入り込んでおり、「電池単体」より電池内蔵製品が混入源になりがちです。

  • スマートフォン、タブレット、PC
  • モバイルバッテリー
  • 加熱式たばこ、電子機器アクセサリ
  • 充電式ライト、電動工具、ハンディ掃除機、電動アシスト自転車
  • 車載(EV/HEV/PHEV)、定置用蓄電池など

旭川市は、プラスチック製容器包装の処理施設で、加熱式たばこやモバイルバッテリー等の混入が原因の発火・発煙事故が多発として、排出ルールを注意喚起しています。(旭川市)

5) リチウムイオン電池の普及率(最新の具体数値で把握する)

「普及率」は定義が揺れやすいため、産廃記事では(A) 電池市場の構成比(B) 搭載製品側の普及の2本立てが実務的です。

A) 小型二次電池市場での構成比(日本)

電池工業会(BAJ)の自主統計(小型二次電池)では、2024年の小型二次電池販売数量のうち、リチウムイオン電池は306,454、小型二次電池計は515,584で、単純比で約59.4%です(出典:BAJ 2024)。

B) 車両側(電動化の裾野)

日本自動車工業会(JAMA)の資料では、2024年の新車登録に占める代替燃料車の比率が60%超まで拡大した旨が示されています(出典:JAMA)。また、EV比率そのものは別統計で「2023年に新車販売の1.7%」という整理もあります。

6) リチウムイオン電池が発火原因の実際にあった大型火災

事例:茨城県のごみ処理施設火災(復旧費“少なくとも約40億円”)

茨城県の常総環境センターでは、2024年12月の火災で不燃ごみ処理設備が焼損し、報道では復旧に少なくとも約40億円の試算が示されています(原因は不燃ごみへのLIB混入が推定、出典:毎日新聞 2025年)。

全国傾向:火災件数が増加(施設・収集車でも発生)

消防庁の初の全国調査として報道されている集計では、2024年は982件、処理施設や収集車での火災も具体件数が出ています(出典:FNN 2025年)。

7) リチウムイオン電池の産業廃棄物処理における安全な取り扱い方法(課題→対策)

ここが記事の最重要部分です。排出事業者・収集運搬・中間処理(選別/破砕/圧縮)で、やることを分解します。

7-1. 排出事業者(工場・事務所)側の安全運用

課題(現場で起きがち)

  • 「内蔵品」が見落とされ、混合廃棄物に混入(小型家電、工具、加熱式たばこ等)
  • 端子が露出したまま保管(接触短絡)
  • 破損・膨張品を“とりあえず箱へ”(最危険)

対策(具体策)

  • LIB単体/内蔵品を分別し、他廃棄物と混ぜない(最優先)
  • 端子部の絶縁:ビニルテープ等で端子を覆う
  • 保管容器のルール化:金属製容器+不燃緩衝材(砂・バーミキュライト等)。破損・膨張品は隔離容器へ
  • 濡らさない・高温に晒さない
  • 委託契約書の注意事項にLIBである旨を明記(北海道庁の注意喚起と整合)
  • 回収スキームの活用:広域認定・回収網(JBRC等)を検討

7-2. 収集運搬(産廃)側

課題

  • 荷姿不良(箱の中で端子同士が接触)
  • 途中での圧縮・荷崩れ
  • 「何が入っているか不明」な混載

対策

  • 荷姿基準を受入条件化(端子絶縁、個別袋、破損品隔離を契約条項に)
  • 混載禁止ゾーン:可燃物・金属スクラップ等と同一車両で自由に転がる状態を避ける
  • 運搬中の発熱監視:異臭/白煙時の初動手順を整備

7-3. 中間処理(破砕・選別・圧縮)側:最大の火点

課題

  • 破砕機・コンベヤで衝撃、圧縮でセル破損→短絡→火花→周囲可燃物へ延焼
  • 初期消火が遅れると、設備停止・復旧長期化

対策(設備×運用)

  • 破砕前に「電池疑い」を抜く前処理(目視ライン強化、工程分離)
  • 火災検知と初期消火の即応性(熱源検知+自動散水/放水を火点に集中配置)
  • 隔離・鎮静化の手順(発煙物を不燃区画へ移す/不燃材で覆う/冷却)
  • 受入基準の見直し(混入しやすい品目は事前分別・申告を義務化)
  • 参考:LIB起因の発火・火災対策を体系化したガイドライン(NIES資料)

8) 北海道の課題と、他県比較で見える打ち手

8-1. 北海道の構造課題(地理×物流×分別)

  • 広域・長距離物流:回収拠点が分散し、荷姿が乱れやすい
  • 小口排出:小型充電式機器が“少量多発”で混入しやすい
  • 自治体側でも注意喚起が継続(例:旭川市)

8-2. 他県の動き(例:埼玉県×川口市)

埼玉県は川口市や企業と連携して、分別回収の実証試験(拠点回収ボックス等)を進め、成果を市町村向けマニュアルに反映するとしています(出典:埼玉県)。また川口市も、ごみピット火災でLIB等の可能性に言及し、確認結果を公表しています(出典:川口市)。

8-3. 比較から導ける北海道の具体策

  • 拠点回収を増やす:遠隔地ほど「混載してしまう前に集める」導線づくり
  • 受入条件の標準化:「端子絶縁」「破損品隔離」「内蔵品申告」をテンプレ化
  • 破砕前の電池抜き取りに投資:前段分別・検知・初期消火を集中配置
  • 事故コストを数字で見せる:茨城の事例では復旧費が少なくとも約40億円
  • 混入源トップを固定して潰す:モバイルバッテリー、加熱式たばこ、工具、掃除機等

まとめ:混入させない・短絡させない・破砕前に抜く

LIBは普及の結果、廃棄段階で火災リスクが顕在化しています。実務の三本柱は、①混入させない(分別)②短絡させない(絶縁・荷姿)③破砕前に抜く(工程設計)です。北海道は広域性ゆえ、拠点回収+受入標準化+前段分別投資が特に効果を出しやすい構造にあります。

参考(出典)
・北海道庁「リチウムイオン電池を使用した製品の適正排出」
・旭川市「発火の恐れがあるものの混入について」(更新:2026-02-18)
・電池工業会(BAJ)統計(小型二次電池、2024)
・消防庁関連の火災件数報道(FNN)
・常総環境センター火災の復旧費報道(毎日新聞)
・埼玉県/川口市 公表資料
・NIES(国立環境研究所)ガイドライン資料

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