
北海道の産廃処理業界:人手不足の現状と対策
北海道の産業廃棄物処理業界は、排出量の規模が大きい一方で、人手不足と高齢化が進行し、収集運搬・中間処理・最終処分の全工程で負荷が増しています。本稿では、最新の統計をもとに北海道の現状を整理し、将来リスク(課題)と、外国人雇用・シルバー人材活用・DX等の具体策(対策)を実務レベルで解説します。
1. 北海道の産業廃棄物処理業界の現状(最新データで把握)
1-1. 北海道の産業廃棄物排出量(最新)
環境省の「産業廃棄物の排出・処理状況等(令和5年度速報値)」の都道府県別データによれば、北海道の産業廃棄物排出量は 35,109(千トン)(=約3,510.9万トン)です。
北海道の排出構造の特徴(量が多い理由)
同データの内訳を見ると、北海道は 家畜ふん尿が 20,175(千トン) と突出しており、一次産業由来の比重が大きいのが特徴です。これは「広域・分散・季節変動」が強くなりやすい構造を生み、収集運搬や処理工程のオペレーション負荷を押し上げます(後述の人手不足とも相性が悪い)。
1-2. 他県との比較(北海道はどの位置か)
都道府県別の排出量(令和5年度速報値)には、たとえば以下の水準が示されています。
- 北海道:35,109(千トン)
- 東京都:26,726(千トン)
- 愛知県:19,149(千トン)
- 千葉県:18,197(千トン)
この比較から言えるのは、北海道は「都市型(建設・製造中心)」の大排出地域とは性質が異なる一方で、総量としては全国でも上位クラスに位置しうる、という点です。
2. 人手不足の実態(不足しているを数字で見る)
2-1. 現場職の求人が伸びている(採用が追いつきにくい)
北海道における職種「産業廃棄物収集運搬作業員」について、厚生労働省(求人統計)の整理では、2024年3月時点の求人数が249件で、前年同月比 +6.0%とされています。需要側(仕事量)が落ちない/むしろ増える局面では、採用難は構造問題化しやすくなります。
2-2. 多様人材が既に動員され始めている(環境省調査)
環境省の調査(産業廃棄物処理業の多様な人材確保)では、回答351社のうち、以下の実態が示されています。
- 外国人を雇用している企業:44社(外国人の平均人数 5.5人)
- 高齢者を雇用している企業:131社(高齢者の平均人数 14.4人)
つまり、業界としても「従来型の採用(日本人若年男性中心)」だけでは回らず、外国人・高齢者等の活用に舵を切り始めているのが現状です。
3. 課題:このままだと、北海道の産廃処理業界の将来はどうなるか?
ここでは抽象論ではなく、現場で起こりやすい「連鎖」として整理します。
3-1. オペレーション崩壊の連鎖(回収遅延 → 保管逼迫 → 事故・法令リスク)
人手不足が進むと、まず起こるのは「回収便の減便」「臨時便の停止」「繁忙期の受注制限」です。すると排出事業者側で保管が長期化し、次のリスクが増えます。
- 保管量増による火災・漏えい等の事故リスク
- 保管基準逸脱・契約外処理などのコンプライアンスリスク
- 地域の苦情増(臭気・騒音・景観)→ 行政対応コスト増
北海道は広域・分散が強いため、同じ人員減でも影響が大きく、都市部より早く逼迫しやすい構造です(特に冬季の移動制約が上乗せされる)。
3-2. コストの上昇と価格転嫁の摩擦(必要経費化が進む)
採用難は人件費だけでなく、以下も押し上げます。
- 残業・代替要員・外注(下請)コスト
- 教育コスト(未経験者・多国籍化に伴う教育体系の再設計)
- 安全対策投資(事故が起きると一発で赤字化しやすい)
価格転嫁が進まない局面では、撤退・統合が増え、地域の処理能力がさらに細る、という悪循環になります。
3-3. 担い手の高齢化が進むほど、事故率と離職率が上がる
高齢化自体は強み(熟練)にもなりますが、重量物・車両・重機を扱う以上、設計が古い現場のままだと体力面での離職が増えます。厚生労働省も、産業廃棄物処理業向けに「未熟練労働者への安全衛生教育」等を整理しており、安全教育の標準化は必須です。
4. 対策:北海道の産廃処理業界が取り得る具体策(実務レベル)
「外国人雇用」「シルバー人材」だけでなく、採用難でも回る設計に落とすのが要点です。対策を、現場で実装できる順に整理します。
4-1. まずやるべきは仕事の分解と危険作業の限定(省人化の前提)
目的:熟練者でないと回らない仕事を減らし、採用の母集団を広げる。
- 収集運搬:ルート計画・伝票・顧客連絡を内勤へ寄せ、運転者の負担を削る
- 中間処理:ライン作業を「判断が必要」「単純反復」に分け、前者を熟練者へ集約
- 最終処分:受入計量・受付・写真記録・台帳更新を定型化し、誰でも回せるようにする
ポイント:この分解がないまま外国人・高齢者を入れると、教育負荷が爆発します(現場が疲弊して離職しやすい)。
4-2. 外国人雇用(制度・現場・教育をセットで設計)
(1) 制度動向:廃棄物処理が受入対象に整理されつつある
出入国在留管理庁(法務省)側の資料では、特定技能制度/育成就労制度の受入れ対象分野として「廃棄物処理」等を含める整理が示されています。実務では、告示・運用要領・試験整備・施行時期等の確定を都度確認し、制度施行前から準備だけ先行させるのが合理的です。
(2) 現場実装の具体策(失敗しない型)
- 職務設計:最初の6か月は「危険作業を外す」「日本語依存を減らす」業務から開始(例:ヤード内の軽作業、仕分補助、清掃、受入補助、計量補助、構内運搬の補助)
- 教育設計:写真・動画ベースの手順書(日本語+母語補助)、指差呼称・危険予知(KY)の定例化、1日15分の安全ミーティング(短く、毎日)
- 生活設計(離職対策):住居、通勤、冬季の生活支援、相談窓口を会社の仕組みにする
- ルール設計:事故報告・ヒヤリハット報告を「叱責ゼロ」で回す(報告文化が死ぬと労災が増える)
(3) 受入側のKPI(最低限これだけは追う)
- 3か月定着率/6か月定着率
- ヒヤリハット件数(増えるのが正常。ゼロは危険)
- 作業標準の理解テスト(言語ではなく行動で判定)
4-3. シルバー人材(高齢者でも安全に働ける配置に変える)
(1) 供給側の現実:全国の会員数は減少傾向
全国シルバー人材センターの統計では、加入会員数(全体)は 2024年で673,942人 で、近年は減少傾向です。「シルバーを使えば無限に人が来る」ではなく、仕事の切り出しと魅力設計が必要です。
(2) 北海道の企業側:高年齢者雇用は拡大している
北海道労働局の集計では、65歳以上定年企業が44.2% など、高齢者就業の受け皿は広がっています。
(3) 産廃業で刺さる配置例(安全性と生産性の両立)
- 受付・計量・伝票チェック・写真整理・マニフェスト関連の補助(屋内・定型・座り作業中心)
- 構内の軽作業(5S、清掃、工具管理、表示物の整備)
- 選別ライン:重量物を外し、投入・抜き取り・異物除去の軽作業化を前提に再設計
高齢者配置を増やすほど、安全教育の標準化が重要になります。
4-4. 人を増やすだけでなく、人が減っても回るDX・機械化
ここは投資対効果が明確に出やすい領域です。
- 配車・ルート最適化:走行距離と待機時間を削る(燃料+残業+車両稼働率に効く)
- 受入のデジタル化:予約枠・受入基準の事前確認・写真提出で現場判断を減らす
- 選別工程の省人化:ベルトコンベア上の検知(カメラ・AIは段階導入でも効果)
- 保全の仕組み化:故障で止まる時間が最大のムダ(点検を定型化し、属人化を剥がす)
5. まとめ(記事の結論)
- 北海道の産業廃棄物排出量は 約3,510.9万トン(令和5年度速報値) で、内訳に家畜ふん尿が大きいという特徴がある。
- 人手不足は「求人増」「多様人材の動員」など、数字にも表れている。
- 将来リスクは、回収遅延→保管逼迫→事故・法令リスク→撤退・統合の連鎖として顕在化しやすい。
- 対策は、(1)仕事の分解、(2)外国人雇用の制度×現場設計、(3)シルバー配置の安全設計、(4)DX・機械化をセットで実装すること。
6. 行政書士に相談するメリット(北海道の産業廃棄物処理業界において)
北海道の産業廃棄物処理業界が直面している人手不足や事業継続リスクは、単なる「労務問題」ではなく、許可制度・行政対応・法令順守と密接に結びついた経営課題です。そのため、行政手続と業界実務の双方を理解している行政書士へ相談することには、明確なメリットがあります。
6-1. 許可・変更手続きを前提にした「現実的な対策設計」ができる
産業廃棄物処理業は、処理能力・人員体制・設備内容が許可要件と一体で評価されます。人手不足対策として業務内容や運用を変更する場合でも、
- 許可条件に抵触しないか
- 変更届・変更許可が必要か
- 行政説明が求められるか
といった点を見誤ると、後から是正指導や業務停止リスクが生じかねません。行政書士に相談することで、許可制度を前提にした実行可能な対策を初期段階から設計できます。
6-2. 行政対応・監督強化を見据えたリスクマネジメントが可能
近年、産業廃棄物処理業界では、
- 立入検査の厳格化
- 帳簿・マニフェスト管理の精度要求
- 事故・苦情発生時の行政対応の迅速化
が進んでいます。人手不足の状態で事故やトラブルが発生すると、「人が足りなかった」という理由は一切通用しません。行政書士が関与することで、
- 平時からの書類整備・運用ルール構築
- 指導・助言への対応方針の整理
- 是正計画の作成・提出
までを一貫してサポートでき、経営リスクを最小化できます。
6-3. 外国人雇用・シルバー人材活用を「制度面」から補完できる
外国人雇用や高齢者活用は、人事・現場の工夫だけでは完結しません。
- 在留資格・就労範囲との整合性
- 業務内容と法令の適合性
- 安全配慮義務・教育体制の説明可能性
といった点が、行政・監督官庁から問われます。行政書士が関与することで、「問題が起きた後」ではなく「問題が起きない設計」を制度面から支援できます。
6-4. 北海道特有の事情を踏まえた広域・分散型事業への対応
北海道では、
- 広域移動
- 冬季の業務制約
- 一次産業由来廃棄物の多さ
といった地域特性が、産業廃棄物処理業の運営に大きく影響します。行政書士は、地域行政(道・市町村)の運用実態を踏まえた調整・説明を行えるため、机上の理論ではない、北海道に適した対応策を構築できます。
6-5. 経営者が「現場対応」に追われない体制を作れる
人手不足の局面では、経営者自身が現場対応・行政対応・書類対応に追われがちです。しかしそれでは、
- 本来行うべき経営判断
- 価格交渉・取引先対応
- 将来投資・事業再設計
に時間を割けなくなります。行政書士を外部パートナーとして活用することで、行政対応・制度整理を任せ、経営者は経営に集中する体制を構築できます。
6-6. 「困ってから」ではなく「困る前」に相談する価値
産業廃棄物処理業界では、問題が顕在化した段階での対応は、コストも時間も大きくなりがちです。人手不足・高齢化・制度変更が同時進行する現在だからこそ、
- 早期の現状整理
- 将来を見据えた運用設計
- 行政との関係性を前提とした対策
を行うことが、事業継続と安定経営につながります。行政書士への相談は、そのための現実的で有効な選択肢と言えるでしょう。

