
北海道の自動車リサイクルと資源回収インセンティブ制度
本記事では、北海道の自動車リサイクル業界を、経済産業省・環境省が進める「資源回収インセンティブ制度(2026年開始予定)」の方向性とともに整理します。PP(バンパー・内装)やサイドガラスなどの特定資源について、現行制度との比較シミュレーションを交えて、制度導入の背景(課題)と採用効果(対策)を具体的に解説します。
関連記事(内部リンク):北海道の産廃業界の課題と対策(概説)/リサイクル関連の許認可サポート(行政手続き)
目次
- 1. 北海道の自動車リサイクルの現状
- 2. 現行制度の仕組みと限界
- 3. なぜ国はインセンティブ制度を導入するのか(課題)
- 4. 資源回収インセンティブ制度の概要(2026年開始予定)
- 5. 【比較シミュレーション】現行 vs 制度採用(北海道モデル)
- 6. 北海道と他県の比較
- 7. 制度採用による改善効果(対策)
- 8. 北海道での具体的実務戦略
- 9. 今後の展望(北海道の自動車リサイクル業)
- 10. 本件について行政書士に相談するメリット
- 注釈
1. 北海道の自動車リサイクルの現状
日本では、使用済自動車(ELV)の発生台数は約273万台(2022年)と整理されています。また、1台あたりに含まれるプラスチックは約100kgと推計されており、国内全体では約28万トン規模の自動車由来プラスチックが存在します。
しかし、解体段階で回収されないプラスチックの多くはASR(破砕残さ)※1に回り、その中に約30%程度のプラスチックが含まれると報告されています。
北海道の規模感を見ると、2024年度の使用済自動車引取報告件数は約144,400件です。これは全国でも上位クラスに位置します。一方で北海道は、広域分散型で拠点間距離が長く、冬季物流制約も加わるため、回収・保管・輸送コストが本州よりも高止まりしやすい構造を抱えています。
内部リンク(理解を深める):北海道の物流コストと事業リスク(冬季含む)
2. 現行制度の仕組みと限界
自動車リサイクル法に基づく現行制度は、リサイクル料金の前払い方式により、フロン類やエアバッグ類などの適正処理を安定的に実施してきました。しかし、問題は「法的義務対象」と「市場任せ部分」の差にあります。
回りやすい資源/回りにくい資源
- 回りやすい資源:鉄・非鉄金属など有価性が高いもの
- 回りにくい資源:プラスチック/ガラス/複合素材
プラスチックやガラスは回収・選別・保管・運搬コストが先行しやすく、特に北海道では輸送費が採算を圧迫しやすいのが実情です。
3. なぜ国はインセンティブ制度を導入するのか(課題)
制度導入の背景には、明確な政策課題があります。ポイントは、「回収すべき資源が、構造的理由で回らない」ことです。
(1)市場の失敗
回収したい資源ほど単価が低く、体積が大きく、異物混入リスクが高いため、事業者単独では採算化が難しい状況が生じていました。
(2)ASR依存構造
ASRには約30%のプラスチックが含まれると推計されますが、そこからの高度選別は経済合理性が低く、回収量の拡大に限界がありました。
(3)動静脈連携の不足
自動車メーカーは再生材利用拡大を目標としていますが、回収段階で十分な量が確保できないという供給側のボトルネックが存在します。そのため、経済産業省・環境省が制度的テコ入れを行う必要があったのです。
内部リンク(関連法令):自動車リサイクル法の実務ポイント/廃棄物処理法の全体像(許可・委託・保管)
4. 資源回収インセンティブ制度の概要(2026年開始予定)
制度開始時点の対象資源は、主に以下のとおりです。
- PP(ポリプロピレン)製バンパー・内装樹脂
- サイドガラス
インセンティブ単価は28円/kg(税別)とされています。特徴は、(1)コンソーシアム方式、(2)みなし重量方式、(3)ASR料金を原資とした補填型設計です。これは「利益創出」ではなく、回収コストの一部を制度で支える考え方です。
5. 【比較シミュレーション】現行 vs 制度採用(北海道モデル)
ここでは、北海道の中堅解体業者を想定し、現行制度とインセンティブ制度採用時の違いを数値化します(モデルケース)。
前提条件
- 年間処理台数:1,000台
- PP回収量:20kg/台
- ガラス回収量:6kg/台(控えめ想定)
- 単価:28円/kg
5-1. 現行制度の場合
PPやガラスを積極回収すると、作業時間増加、保管コスト増、圧縮・梱包費、長距離輸送費が追加で発生します。資源売却単価は市況依存であり、北海道では輸送費負担が重いため、回収が広がりにくい状況でした。
5-2. インセンティブ制度採用の場合
PP(20kg/台):20kg × 28円 = 560円/台 → 年間:560円 × 1,000台 = 56万円
ガラス(6kg/台):6kg × 28円 = 168円/台 → 年間:168円 × 1,000台 = 16.8万円
合計:約72.8万円/年(税別)。この金額は利益ではなく、物流費や作業負担の一部を吸収する原資になります。
内部リンク(採算設計):回収・運搬コストの簡易シミュレーション(テンプレ)
6. 北海道と他県の比較
千葉・神奈川・埼玉などは短距離輸送で効率的に回収可能な地域が多く、集積性が高い傾向があります。北海道は、輸送距離が長く、集約拠点不足や冬季制約が重なるため、制度活用の有無が経営差につながる可能性があります。
7. 制度採用による改善効果(対策)
改善① 採算の見通し確保
固定単価(28円/kg)が示されることで、最低限の原資が見通せるようになります。市況や運賃変動の影響を受けやすい北海道では、見通しが立つこと自体が運用改善につながります。
改善② 工程標準化
コンソーシアム参加により、回収工程や品質基準が明確化され、属人的運用から脱却しやすくなります。
改善③ ASR削減
解体段階で資源回収が進むことでASR量が減少し、循環率の向上が期待されます。
8. 北海道での具体的実務戦略
(1)共同物流拠点の整備
道央・道北・道東などで中継圧縮拠点を設け、混載・積載効率を高めることが重要です。特にPPは「軽い・かさばる」特性があるため、圧縮・梱包の標準化が効果的です。
(2)対象品目集中戦略
制度開始時の対象(PP・サイドガラス)に絞り、作業教育・保管・品質の運用を固めることで、早期に安定運用へ移行しやすくなります。
(3)KPI設計(円/台・分/台)
北海道では「運べて初めて価値」になりやすいため、kgではなく、円/台(物流費・補填)と分/台(追加作業時間)で管理するほうが実務に落ちます。
内部リンク(現場改善):回収・保管・混載の標準化(現場運用)
9. 今後の展望(北海道の自動車リサイクル業)
北海道は物流負担という不利を抱えながらも、広域最適化モデルを構築できる可能性があります。資源回収インセンティブ制度は単なる補助ではなく、循環経済移行の基盤装置です。共同物流、品目集中、標準化、数値管理を徹底できれば、北海道が先行モデルとして全国に波及する可能性もあります。
10. 本件について行政書士に相談するメリット
資源回収インセンティブ制度は、単に「参加するかどうか」ではなく、契約設計と許認可・運用リスクの整理が成否を分けます。行政書士に相談するメリットは次のとおりです。
(1)制度参加要件・契約整理(コンソーシアム対応)
コンソーシアム契約の内容確認、業務範囲と責任分担の整理、許認可との整合性確認など、制度参加に伴うリスクを事前に可視化できます。
(2)収支シミュレーションと事業計画整理
台数別の収支シミュレーション、物流設計の整理、関係先との契約書・覚書の作成支援により、「制度を使って回る形」を事業計画に落とし込めます。
(3)行政対応・申請対応(変更届・更新・追加)
業務範囲の変更や運用変更に伴って、変更届・更新許可・行政との事前相談が必要になるケースがあります。複数自治体に跨る運用になりやすい北海道では、手続きの交通整理を専門家に任せるメリットが大きくなります。
(4)リスク回避(保管・契約・収支の落とし穴対策)
不適切保管リスク、契約不備リスク、収支見誤りリスクを早期に潰し込み、制度導入初期の混乱を最小化できます。
内部リンク(相談導線):お問い合わせ(初回ヒアリング)/自動車リサイクル・資源回収の手続き支援
注釈
※1 ASR(Automobile Shredder Residue):使用済自動車を破砕した後に残る混合残さ。
※2 マテリアルリサイクル:廃棄物を原材料として再利用すること。
※3 フロン回収:カーエアコン等から冷媒フロンを回収し大気放出を防止する工程。

