産廃旅行記@室蘭

石膏ボードリサイクル&PCB処理の現場を訪ねて

環境コンサル行政書士法人の若月です。

2025年10月22日、私は室蘭市へ向かいました。札幌から車でおよそ2時間。目的はもちろん、いつもの“現地視察”です。

室蘭といえば、焼き鳥。とても美味。殻ごと食べるウズラの卵串は、珍しいけど、好み的にはイマイチ。

石膏ボードを、もう一度ボードへ。

今回お邪魔したのは、廃石膏ボードリサイクルを手掛ける**「トクヤマ・チヨダジプサム」**様。2年前に展示会で名刺交換をしたご縁から、今回の視察を快く受け入れていただきました。

北海道、特に札幌では、数年前に市の埋立処分場が廃石膏ボードの受け入れを停止したことで、
・処分単価の高騰
・処理先の確保難
といった課題が一気に浮上しました。

一般的なリサイクル手法としては、不純物を除去して粉砕し、土壌改良剤として再利用するケースが多いものの、製造段階で使用される化学物質が作物へ影響を及ぼすリスクが懸念されています。

さらに石膏は水に弱く、濡れると化学反応によって硫化水素を発生させる性質があります。たとえ埋立処分を行っても、雨ざらしになると有害ガスが発生する危険性をはらんでいるのです。

そんな中、チヨダジプサム様が実現しているのが「ボードTOボード」――一度廃材となった石膏を再び石膏ボードへと蘇らせる、まさに循環型のリサイクル技術です。

その工程は、破砕 → 焼成 → 晶析 → 濾過。
このうち「晶析」とは、石膏の結晶を成長させる工程のことだそうです。

そうして再生された石膏原料を用い、隣接する**「チヨダウーテ」**様が新たな石膏ボードを製造。見事に完結したリサイクルフローを構築されていました。

率直に言えば、途轍もない手間と努力を惜しまない姿勢に圧倒されました。こうした愚直な取り組みこそが、
埋立量の削減、リサイクル率の向上、廃石膏ボードの有効活用――
社会課題の解決に直結していくのだと実感しました。

高度なリサイクル工程を間近で見学でき、大いに学びを得ました。
トクヤマ・チヨダジプサム様、本当にありがとうございました。


次なる視察先――JESCO室蘭事業所

続いて訪れたのは、「JESCO」。国が運営するPCB廃棄物処理施設です。

PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、かつて絶縁油としてトランスやコンデンサに使われ、
「カネミ油症事件」の原因物質として社会問題を引き起こした化学物質。

その後、廃PCB特措法が制定され、日本は国家規模で適正処理に取り組んできました。
そして現在――法定処理期限を目前に、国内のPCB処理率は**99.8%**に到達。
室蘭のJESCOも、令和8年4月にその役割を終えようとしています。

処理工程は徹底した安全管理のもと行われます。作業員は特殊防護服を着用し、被曝リスクを極限まで抑えた環境で作業。最終段階では、プラズマ処理施設で高温焼却――まさに“焼き尽くす”ように完全無害化されます。

そのスケールは圧巻です。
施設建設費は約200〜300億円、毎月の運転費(主に電力・燃料費)は1億円超。民間では到底維持できない規模です。


公害から進歩へ――JESCOが示すもの

かつて便利さの象徴だったPCBは、やがて毒性が明らかになり、日本は莫大なコストと労力をかけて後始末を迫られました。
しかしそれは、単なる反省ではなく、**「進歩の通過点」**でもあります。

役目を終えようとしているJESCOの巨大施設は、過去の過ちを清算し、未来へと踏み出したこの国の象徴です。
時間はかかりましたが、私たちは一つの問題を確かに解決しようとしています。

そして、これからも新たな課題は必ず現れるでしょう。
けれど、向き合い、学び、克服する――その積み重ねこそが“環境と人の共生”を実現する道だと、あらためて感じました。

JESCOの皆様、ありがとうございました。

現場での知識は何物にも代えがたい価値がありますゆえ、今後も各地の視察記録をお届けしてまいります。

帰りに寄った「ウポポイ 民族共生象徴空間」のキャラクター。トゥレッポん。オオウバユリの女の子だそう。

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