
事例にみる行政機関の仕組みと落とし穴
環境コンサル行政書士法人の若月です。
2025年3月現在、札幌市が、同市南区に所在する「「日本一危険な動物園」で有名なさっぽろノースサファリに対して、都市計画法違反に基づく施設除却命令を出すことを検討しています。
今回はこの一件を例に挙げ、行政機関の仕組みと、どのような事案が起こりうるのかについて解説していこうと思います。
まず、違反の内容については都市計画法上の開発許可を取っていない状態で、都市計画区域内で動物園を作り、施設を建設し、営業していたということになります。
※札幌ノースサファリは自治体と協議の上、改善策を検討中とのことで、この記事は該当する法人や組織を批判するためのものではありません。
その期間20年。
法律の規定を満たさずに、違反状態を保ったまま20年も営業するなんて、そんなことできるのでしょうか。
しかも、ノースサファリ札幌はあちこちで広告を目にする、地元では有名な施設です。
はたから見ると、目を、耳を疑うような事案ですが、これが成り立つということには行政の「縦割り制度」が大きく影響しています。
行政は「建築指導課」「環境生活課」等、それぞれの担当業務を区分けして受け持っています。
それぞれのテリトリーが明確であるが故なのか、この他部署間で互いに干渉することがほとんどありません。
動物園を営むにも第一種動物取扱業許可を取得しないと、事業を開始することは出来ません。
つまり、そちらの許可は取得していることが考えられます。
しかし、第一種動物業取扱許可管轄の環境省です。
管轄外である土地の開発や、建築物の建設に関する指導は全くしなかったのだと思います。
開発許可をとらなかったのが故意なのかはいったん置いといて、営業許可だけ取得し、施設設置に必要な(行政における他部署の)許可取得なくして事業スタートできるということがありえない話ではないということがお判りでしょうか。
日本の行政機関の組織構造が縦割りであるが故に起きた事件の例でした。
ノースサファリの例にみると、動物の飼育施設や宿泊施設そのものに開発許可が必要だったというよりは、施設全体の開発に許可を要するといった形になっています。それに対し産廃処理施設においては施設設置そのものに開発許可が求められるケースもあるため、最終処分場や、焼却施設設置には同様の違反は起きえない。と、筆者は考えています。
一昔前は、この行政の構造を逆手にとって「縦割り行政で、どうせバレないからさっさと事業を始めちゃいなよ」といった趣旨の誘惑をする人もいたようですが、私共(真っ当な)行政書士や、建設コンサルタントの立場からがこのようなご案内をすることは絶対にありえません。
なぜなら、嘘やごまかしはいつかバレるのです。
今回のノースサファリも、メディアに取り上げられたことをきっかけに、20年の時を経て、広く世間に知れ渡ることとなりました。
産廃処理施設、もしくは、事業場内の工場設備、事務所の建屋、これらについて、開発許可未取得の違法建築であることがバレた場合、除却命令がなされます。
「一旦どかして、ちゃんと許可を取って作り直せ」という意味です。
お金をかけて、時間をかけて作った施設が台無しになるだけでなく、風評被害なども発生するため、施設設置は計画段階から入念な事前調査を行うのがとても大切です。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回はこの辺で失礼いたします。