M&A後の組織改革、社員対応まで|中小企業経営者のためのM&A完全ガイド徹底解説6

目次

第6部:M&A後の組織改革って何をすればいい?→社員モチベーションの維持

1. 会計システムの再構築(経理・財務の統一)

M&A後の最初の重要課題のひとつが、会計システムの再構築です。売り手と買い手で異なる会計基準や管理手法が存在すると、決算の遅延や数値の不整合が発生し、経営判断に大きな支障をきたします。

異なる会計基準やソフトを統一し、効率化を図ることが目的です。特に属人化した経理業務が課題となりやすいため、以下のような具体策が有効です。

  • 会計ソフト統一:弥生会計、freee、SAPなど
  • 月次・四半期・年度決算のスケジュール統合
  • 承認フロー・経費精算の内部統制を一本化
  • 外部の会計士やシステムベンダー活用

「見える化」に直結するため、PMI初期に必ず着手すべき領域です。

目的と理由は以下の通りです。

  • 迅速な意思決定を可能にする:異なる会計処理を一本化することで、月次・四半期の数値が早期に確定し、経営陣がスピーディに判断できます。
  • 監査・金融機関対応の効率化:異なる帳簿体系では監査法人や銀行への説明が煩雑になるため、統一システムの構築は信用力向上につながります。
  • グループ全体の見える化:事業部門別の収益性やコスト構造を正確に把握でき、統合後のシナジー効果を測定する基盤となります。

2. 各種規定類の再整備(就業規則・稟議制度など)

M&Aによって複数の会社がひとつになると、従業員が従うべきルールや制度がバラバラのままでは混乱を招きます。そこで、各種規定類の再整備が不可欠です。

公平性担保と文化摩擦防止が大きな目的であり、そのためには「比較・法令確認・一本化・社員説明会」をセットで実施することが求められます。

規定差を放置すると、不満や離職の原因となります。

目的や理由は以下の通りです。

  • 公平性の担保:就業規則や人事評価制度が会社ごとに異なると「不公平感」が生まれ、従業員の士気が低下します。統一ルールにより公平性を確保することが重要です。
  • 効率的な意思決定:稟議制度や承認フローを標準化することで、意思決定が迅速化し、組織全体のスピード感が向上します。
  • コンプライアンス強化:労働法制や会社法に則った規定整備を行うことで、法的リスクを低減します。特に労務トラブルやハラスメント問題の未然防止に有効です。

3. M&A後の社員モチベーション(離職防止・インセンティブ)

M&A後に最も懸念されるのが、従業員の不安やモチベーション低下による離職です。組織の一体化を進めるためには、従業員が安心して働ける環境とインセンティブの仕組みを整えることが欠かせません。

課題として、社員は「自分の未来」を最も気にしています。そのため以下のような対策が効果的です。

  • 経営者による目的・ビジョン説明
  • 雇用維持の明示
  • 成果報酬・特別手当・ストックオプション等のインセンティブ
  • キャリアパス提示(昇進・異動・研修機会)
  • 社員の国家資格等の取得支援:研修費補助や学習時間の確保、受験手当の支給などを通じて専門性の向上と自己実現の両立を促進。

「経営者が何を語るか」と「制度設計」の両輪が重要です。

目的や理由は以下の通りです。

  • 離職防止:環境変化による不安を軽減し、優秀な人材の流出を防ぎます。特にキーパーソンの離職はM&Aの成否に直結します。
  • エンゲージメント向上:従業員に「新しい組織で自分の役割がある」と実感させることで、士気向上につながります。
  • 成果に応じたインセンティブ制度:新体制に適した人事評価・報酬制度を導入し、努力や成果が正当に評価される環境を整えます。
  • 資格取得支援による成長機会提供:国家資格・専門資格の取得支援により「会社に応援されている」という安心感を醸成し、帰属意識を強化します。
  • 文化の融合:旧来の会社文化と新しい文化を融合させ、従業員が安心して新しい組織文化に適応できるよう支援します。

まとめ

M&A後の組織改革の柱は以下の3つです。

  • 会計システム統一による「見える化」
  • 規定整備による「公平性」
  • モチベーション施策による「社員定着」

これらにより、混乱を最小限にし、成長につなげることが可能です。

M&A後の組織改革は、単なる制度統合ではなく「新しい組織をつくる」プロセスです。会計システムの統一は数値の信頼性を担保し、各種規定類の再整備は公平性と効率性を生み出し、従業員のモチベーション対策は組織の安定につながります。さらに国家資格等の取得支援を含めた施策を組み合わせることで、従業員が「ここで働き続けたい」と思える環境を実現し、統合後の組織が早期に一体感を持ち、シナジー効果を最大化することが可能となります。

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