
スクラップヤード許可制へ|有価物保管も規制対象に(廃掃法改正見込み)
金属・雑品・プラ等のスクラップを屋外で保管する「ヤード」について、国が全国一律の許可制へ移行する方向で検討が進んでいます。 これまで「有価物(売れる金属)」として扱われてきた保管も、運用次第では制度の射程に入る可能性が高く、北海道の産廃・資源循環事業者にも影響が見込まれます。
1. 制度の背景(なぜ今、全国一律なのか)
ヤードの不適正保管により、騒音・火災・油分流出や土壌汚染などの生活環境問題が各地で発生しています。 これまで自治体条例が先行してきましたが、条例のない地域へ事業場が移るなど「規制の空白」が課題でした。 さらに現行制度では「廃棄物」か「有価物」かで規制の有無が変わり、運用が複雑化していました。
2. 現行制度(廃棄物なら規制/有価物なら原則自由)
- 廃棄物:廃掃法の対象。保管基準・処理基準、許可(収集運搬・処分)、委託基準などが問題になる。
- 有価物:原則として廃掃法の直接規制外(ただし別法令・条例・消防・近隣対応の論点は残る)。
そのため実務では「スクラップは売れる=有価物だから、敷地内の屋外に置ける」という理解が広く成立してきました。
3. 改正後の姿(有価物ヤードも“事業として”許可制へ)
報道ベースの骨格は次の方向です。
- ヤード事業を許可制(全国一律)へ。
- 規制対象を従来の「廃棄物」だけでなく、有価物も含める方向。
- 対象物品・保管基準(囲い、雨水・油分対策、火災対策、堆積高さ、場内排水、標識、帳簿等)は今後詰める。
- スクラップの海外流出を防ぎ、国内資源循環につなげる狙い。
現行と改正後(見込み)の比較(要点)
| 観点 | 現行 | 改正後(見込み) |
|---|---|---|
| 規制の入り口 | 「廃棄物」中心 | ヤード事業そのものに許可制(有価物も対象へ) |
| 取り締まりの軸 | 廃棄物該当性の判断が争点になりがち | 屋外保管ヤードとしての基準遵守が争点になりやすい |
| 先行規制 | 自治体条例(地域差) | 全国一律化(空白地帯問題を縮小) |
| 実務負担 | 判断と運用で差 | 許可申請、基準整備、記録・管理、監督対応が標準化 |
4. 北海道への影響(全国との数字対比)
環境省が2024年に129自治体を対象に実施した調査では、ヤードは全国で少なくとも3,260件とされ、 内訳は金属スクラップ938件、雑品スクラップ543件、プラスクラップ562件などです。
同調査で「北海道(地域)」は合計19件。内訳は金属スクラップ9件、雑品スクラップ2件、プラ2件、その他5件、不明1件です。
数字が示す「北海道らしい」実務インパクト
- 件数は全国比で少ない一方、金属スクラップは9件あり、対象事業者には直撃度が高い。
- 敷地が広く「一時的に外置き」が成立しやすいが、改正後は外置き運用が許可・基準の射程に入りやすい。
- 札幌圏・港湾周辺では集約・混載・選別が起きやすく、騒音・火災・油分流出対策が「許可要件(基準)」として形式化される可能性。
- 冬季(積雪・凍結)により排水・油分・消火・通行動線が崩れやすく、冬季仕様のヤード管理が重要論点になり得る。
5. 実務上の対策(いまからできること)
- 外置き実態の棚卸し
何を、どこに、どのくらいの高さ・量で、どれくらいの期間、誰の判断で置いているかを整理。 - “ヤードに見える運用”の縮小・区画化
コンテナ化・屋内化・区画表示。雨水・油分・汚水の導線(集水・油水分離・浸透防止)を設計。 - 火災・騒音・粉じんの最小化
消火設備、監視、立入制限、作業時間、重機動線、散水等を「説明可能な形」で整備。 - 契約・受入基準の明文化
受入不可品、混入時の返品・追加費用、写真記録、荷姿基準を規定し入口でリスク遮断。 - 許可制を見据えた書類整備
レイアウト図、保管量管理、点検記録、苦情対応記録、教育記録を先に整える。
6. 期待される効果(事業者側のメリット)
- 悪質ヤードの淘汰により、不適正競争の抑制。
- 火災・環境事故・近隣トラブルの減少(監督対応コストの低減が期待)。
- 海外流出抑制→国内循環の促進。
- 許可・基準遵守の事業者が可視化され、排出事業者が委託先を選びやすくなる(信用の武器)。
7. 罰則の予測(現実的なレンジ:2パターン)
法案条文が未公表のため予測ですが、自治体条例・廃掃法の許可制度の罰則水準から、次のレンジが合理的です。
予測A:条例型(比較的軽め)
先行する条例では、無許可営業や命令違反等に対し「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」程度の枠が見られます。
予測B:廃掃法の許可制水準(重め)
廃掃法の無許可営業は重いレンジ(例:5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金等)が想定され得ます。 ヤード許可が許可体系に強く接続される設計なら、重罰レンジも否定できません。
ほぼ確実に付随するもの
- 改善命令・措置命令(堆積撤去、流出防止、設備改善など)
- 立入検査、報告徴収(記録不備・虚偽報告は別途ペナルティが設計されやすい)
8. 法改正前に行政書士へ相談するメリット
- 自社運用が許可対象になりそうかの一次判定(外置き・堆積・選別・保管期間・受入形態の整理)。
- 許可を見据えたレイアウト/設備/記録の整備順序を設計し、後戻りコストを削減。
- 契約・受入基準の作り込みで、混入・火災・油分流出リスクを入口で遮断。
- 移行期の照会増に備え、行政対応・説明資料を標準化し現場負担を軽減。
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